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縁側に吊るされた柿は、日ごとに色を変えていく。そのすぐそばの籠には、剥けばそのまま口に運べるみかんが積まれている。同じ果実なのに、片方は今すぐ食べる顔をしていて、片方は時間をかけて姿を変えていく顔をしている。
銘柄牛の系図をたどってきた近畿の取り合わせに、今回加わるのは果実です。和歌山という一県だけで、生で食べつなぐ果実と、干して保存する果実の両方が揃い、近畿の顔ぶれはまた一つ厚みを増します。
紀州と呼ばれるこの土地は、温暖な海沿いの気候に恵まれながら、同時に果実を保存の形に変えてきた土地でもあります。生で食べる楽しみと、置いて楽しむ楽しみ。有田のみかんとかつらぎ・九度山の柿を通して、その両方を見ていきます。
和歌山県・有田地方:極早生から完熟まで、生でつなぐみかん
有田地方は、みかんの産地として広く知られる土地です。紀伊水道に面した山の斜面に畑が広がり、海からの照り返しと水はけのよい傾斜地が、みかん栽培に向いた土地として紹介されることが多くなっています。
みかんは同じ産地の中でも収穫の時期によって表情を変える果実です。極早生は酸味がやや立ち、早生は甘みと酸味のバランスが取れ、完熟に近づくほど濃い甘みが乗ってくると語られます。有田では、この時期違いの品種が順に収穫され、秋から冬にかけて棚の顔ぶれが少しずつ移っていきます。届いた箱を毎日少しずつ食べ進める、こたつの定番としての性格は、この果実がそもそも生で食べつなぐことを前提に育てられてきたことの表れでもあります。
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和歌山県・かつらぎ町/九度山町:柿を干し柿に変える、保存の技
紀ノ川の中流、かつらぎ町・九度山町周辺は、柿の産地として知られています。平核無柿や種のない品種として親しまれるたねなし柿が代表的で、渋みを抜く加工を経て店先に並ぶことが多い柿です。同じ紀ノ川流域には奈良県の柿どころも広がっており、水系でつながった一帯として一般に語られることがあります。
この土地の柿を語るうえで欠かせないのが、干し柿という保存の形です。渋柿を皮ごとむいて軒先に吊るし、数週間かけて水分を抜きながら糖分を凝縮させていく。生のまま食べれば数日で食べ頃を過ぎてしまう柿を、乾かすことで長く楽しめる形に変える技術です。紀州の温暖で乾いた季節風が、この乾燥の工程に適していると紹介されることもあります。生で食べる果実の隣に、保存に変える果実がある——紀州の果実に共通する性格です。なお、同じ紀州の保存食としては梅干しもよく挙がりますが、そちらはまた別の土地として改めて訪ねます。
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紀州の果実、味わい方の対応
| 品目 | 産地 | 食べる楽しみ | 迷ったらこう選ぶ |
|---|---|---|---|
| みかん | 有田地方(和歌山県) | 手で剥いて一房、こたつでそのまま食べつなぐ定番の甘酸っぱさ | 極早生・早生・完熟の時期表記とサイズ、訳あり表記の有無を見る |
| 柿(生) | かつらぎ町・九度山町(和歌山県) | 熟れ具合を見ながら、とろりとした甘さの変化を楽しむ | 品種名と熟度の表記、届いてからの日持ちの目安を確認する |
| 干し柿 | かつらぎ町・九度山町(和歌山県) | 乾いた分だけ凝縮した甘さ、常温で長く手元に置ける保存の味 | 個数と大きさの表記、常温保存か要冷蔵かを確認する |
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一揃いの組み方:届いてすぐ食べるか、置いて熟すのを待つか
有田のみかんとかつらぎ・九度山の柿が見えたら、あとは時間の使い方で組み方が分かれます。
届いてすぐ食べ進めるなら、みかんを軸にします。 箱で届いたその日から、極早生・早生・完熟と時期違いの品種を数週間かけて食べ切る形です。常温で置ける果実なので、届いた分だけその都度手が伸びます。
置いて楽しみたいなら、柿を軸にします。 生柿は熟れ具合が届いてからも変わるので、数日かけて食べ頃の変化を楽しめます。さらに時間をかけたいなら干し柿を選べば、乾燥という工程を経て数週間先まで置いておけます。みかんが「今」を食べる果実なら、柿は「これから」を待つ果実です。
この土地に合わせるなら。 近江の米と紀州の梅で組んだ近畿の膳の締めに、有田のみかんや九度山の柿を添えれば、主食から果物まで近畿の中だけで一揃いになります。銘柄牛ですき焼きを囲んだ晩には、食後に柿を一切れ添えるのも近畿らしい取り合わせです。紀州の保存食のもう一つの顔である梅干しは、また別の土地として詳しく訪ねます。
合う人・合わない人・注意点
生の果実をその日に食べ切る手軽さと、時間をかけて味が変わる楽しみの両方を味わいたい人に、紀州の果実は向いています。干し柿のように「待って完成する」食品を面白がれるかどうかが、柿を選ぶ分かれ目です。
一方、届いたその場ですぐ均一な甘さを求める人には、生柿や干し柿の「日ごとに変わる」性格は不向きです。まとめて大量に受け取ってすぐ食べ切りたい人も、日持ちの短い生柿よりみかんのほうが扱いやすい果実です。
まとめ:果実を、置く楽しみに変える土地
紀州の果実は、生のまま食べつなぐみかんと、時間をかけて姿を変える柿という、二つの異なる時間の流れを一つの県の中に持っています。どちらも紀ノ川流域という同じ水系が育てながら、食べ方はまるで正反対です。
まずは今の季節に近いほうを選んでみてください。すぐに食べたい気分ならみかんを、待つ楽しみを味わいたいなら柿や干し柿を。どちらを選んでも、紀州という土地のもう一つの顔に触れられます。
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